2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「僕が、剣道ですか? 4」

次回は、2月1日火曜日にアップの予定です。

小説「僕が、剣道ですか? 4」

十二 朝餉の時に、僕は木村彪吾に「鷹岡藩は初めて来た所なので、何か珍しい所とか物があれば、行って見たいものですが」と訊いた。「当藩で有名なのは、こけしです。こけしの店は随分あるから見られるといいでしょう」と答えた。「お寺はどうでしょう」「鷹…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

十一 昼餉の後、もう一度風呂敷を包み直して針を刺しておいた。 そして、きくとききょうを連れて、町に出かけた。 午前中は虎之助が一緒だったので、何となくリラックスして見ることができなかった。午後はゆったりと見て回ることができた。 甘味処で、汁粉…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

十 目付の木村彪吾は、目付らしい鋭い眼光をしていた。「今日は息子、虎之助の危ないところをお助け頂きありがとうございます」「いえいえ、番所の役人も来ていましたから、私がいなくてもなんとかなったでしょう」「その番所の役人たちも斬られたと息子から…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

九 番所での書取りには、時間がかかった。 その間にお茶が出されただけだった。きくはききょうにミルクを飲ませた。 しばらくして、番所に先程姿を消した若侍が入ってきた。 彼は僕に「危ないところをお助け頂きありがとうございました」と言った。そして、…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

八ー2 次の日、朝餉前に川風呂に入りに行き、折たたみナイフで髭も剃り、朝の澄んだ空気の中で山々を見てきた。何とも気持ちのいいものだった。 きくにも入ってくるように勧め、きくはききょうを連れて、入りに行った。その間に朝餉の用意がされた。 きくが…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

八-1 夕暮れまで大山道を歩き、高杉宿に着いた。道行く人に次の宿場まで三里ほどあると聞き、ここで宿をとることにした。 通りがかりの人にどこの宿屋がいいか訊くと、皆、若松屋だと答えたので、若松屋に泊まることにした。 赤ん坊がいるので、隅の個室が…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

七 それから三日後、四月二十七日の昼頃だった。 高木屋に男が来て「鏡京介様はいらっしゃいませんか」と言うので、下りていくと、上がり口に行商人が座っていた。「私が鏡京介だが、あなたはどなたですか」と訊いた。「名乗るほどの者ではございませんが、…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

六 次の日は、朝餉が運ばれてきたと言うので起きた。 布団をたたみ、食膳を部屋に入れたところで、僕は外に干してあった着物を着て、顔を洗いに行った。着物は乾いていた。 朝餉は、やはりいつもより多めに食べた。 食べ終わった後、眠くなったので、きくの…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

五-2 僕と下っ端の役人は宿を出て、通りを歩いた。 しばらく歩くと宿場町を抜けた。そして三里ほど歩くと次の宿場町に出た。 その宿場町を出ると、周りは田んぼだらけだった。青々と育っている稲が並んでいた。「あと、もうすぐです」と下っ端の役人が言っ…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

五-1 宿に戻ると、僕の帰りが遅いので、きくが心配していた。 僕は番所であったことを話した。「まぁ、そんなことになったんですか」ときくは心配そうに言った。「やるしかないだろう。相手は私を試しているのかも知れない」と僕は答えた。「まぁ、そうで…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

四-2 二日ほどして、昼頃に番所の下っ端の方の役人が来た。「同行していただきたい」と言うので、「きく。出かけてくるがいいか」と訊くと、「きくはここでお帰りをお待ちしています」と答えた。 僕は、下に下りていき、草履を履くと、その役人について、番…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

四-1 次の日、起きると、きくはおっぱいを出してききょうに乳を飲ませていた。 顔を洗うと、朝餉になった。 乳を飲んだが、皿にご飯を載せて湯を少し掛けて潰すと、それをききょうはよく食べた。今日もおかわりをした。 僕も焼き魚をおかずにご飯を二杯食べ…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

三 旅籠に風呂がなかったので、通りの向こうの銭湯に入りに行くしかなかった。銭湯は半身浴だった。荷物が取られるのが、心配だったので、交代で入りに行くことにした。 僕が先に入ることにした。銭湯代と着替えの肌着とトランクスとタオルを持って行った。…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

二 宿場町への行き方は教わった。その方向に向かって、道を歩いた。 途中、腹が減ったので、もらったおにぎりを食べた。おにぎりを食べると、水が飲みたくなる。近くに人家は見えなかった。右手は山だった。山なら湧き水もあるかと思い、ショルダーバッグの…

小説「僕が、剣道ですか? 4」

僕が、剣道ですか? 4 麻土翔 一 僕は校庭に倒れた。きくとききょうはいなかった。 それを見た母が携帯で一一九番をした。 意識を取り戻した時、僕ときくとききょうは、どこかの畑に倒れていた。 僕もきくもききょうもびしょ濡れだった。 僕は立ち上がると…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十九-2 次の日は午前七時に起きた。ききょうを抱いて下に下り、出勤前で忙しくしている親父に抱かせた。母は怪訝な顔をしていた。 朝食を済ませた親父が家を出る時、きくが玄関で「いろいろとお世話になりました」と言った。父は何のことか分からないよ…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十九-1 家に戻ると、沙由理から携帯が掛かってきた。「無事、PTA会も切り抜けたようじゃない」「お母さんから聞いたのか」「ううん、ママは何も話してはくれなかったけれど、様子でわかるわ」「そうか。で、何の用だ」「何の用じゃ、ないわよ。PTA…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十八-2 「プロジェクタはどう使うんですか」と言うと副校長が立ってきて、プロジェクタがノートパソコンに接続されているのを確認して、プロジェクタに電源を入れた。 副校長は「カーテンを閉めてください」と言った。 ノートパソコンに電源を入れると、…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十八ー1 一月十二日の放課後、担任の梶川祐子に呼ばれた。中年の女の教師だった。「黒金高校と揉めているという話を聞いているんだけれど、本当」 僕は「揉めているというより、因縁を付けられていました」と言った。「それでどうしたの」「逃げました」…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十七 家に帰り着いた僕はリュックのようになったオーバーコートとショルダーバッグを持って自分の部屋に上っていった。部屋に入り、オーバーコートとショルダーバッグをそこらあたりに置くと、ベッドに倒れ込んだ。そして、そのまま眠った。「ご飯ですよ」…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十六-2 僕はもう一隅に隠してある金属串五本入りのパックも取り出した。そして、金串だけにした。八本あった。 そこに隠してあった催涙スプレーも取り出した。 そして、事務所の扉を開けた。思った通り、クロスボウの矢が雨あられと飛んできた。 僕はク…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十六-1 工場を覗くと、屈強な男たちが少なくとも三十人以上いた。竜崎雄一は、工場の奥にいるか、事務所の中にいるのだろう。 とにかく姿は見えなかった。 僕は見える範囲の男たちの腕でも足でもいいから、クロスボウで矢を放った。十人は命中したが、こ…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十五-2 旧黒金金属工業に着いたのは、正午五分前だった。歩きながら、ナックルダスターを取り出して、手に嵌め、その上から皮手袋をした。 黒金町に入ってから、つけてくる奴が二人いた。 門の前に立つといきなり、クロスボウの矢が襲ってきた。門の陰に…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十五-1 一月六日、土曜日。 午前七時に目が覚めた。 明日は、いよいよ黒金高校と一戦を交えることになる。緊張感はなかった。 朝食をとった後、自分の部屋に籠もって、明日のプランをいろいろと練った。しかし、いくら考えてみても、実際に戦ってみなけ…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十四 浅草から、都営浅草線に乗って来た時と反対の順序で高田馬場駅まで帰った。 僕はつけてくる奴がいるので「俺んちに寄って行けよ」と富樫に言ったら「いいね」と言うので、一緒に帰ることになった。つけてくる奴がいるので、大きな通りを選んで帰るこ…

小説「僕が、剣道ですか? 3」

三十三 四日は午前七時に目が覚めた。 親父は「今日は、新年会があるから遅くなる」と言って出て行った。 僕はトーストパンにコーヒーとサラダで朝食を済ませた。 そういえば、昨日、きくが「お餅をオーブントースターで焼くのには驚きました」と言っていた…