2024-01-01から1年間の記事一覧
次回は、11月5日火曜日にアップの予定です。
二十二 次の日に、未解決事件捜査課に行くと、皆はもう来ていた。 僕がデスクに座ると、沢村孝治がファイルを持ってきた。 「これなんかどうですか。犯人らしき者の血が残っているのでDNA鑑定できますよ」 「読んでみよう。置いていってくれ」と言った。 …
二十一 今日は、月曜日だった。仕事が終わると剣道場に行った。 西森と三十分ほど打込みの練習をして切り上げた。 「今日は早いですね」と西森が言った。 「ちょっと、疲れていましたね」と応えた 「大変な活躍ですものね、未解決事件捜査課は」と西森が言う…
二十 次の日、定時に未解決事件捜査課に行くと、皆揃っていた。僕は北川を呼び、昨日与えた指示をもう一度言った。 すると北川は「もう検索し終わっています」と言った。北川のデスクに行くと新井武の免許証が映し出されていた。僕は手帳を取り出して、その…
十九 午後一時頃、西新宿署に着いた。僕は未解決事件捜査課に戻ると北川に「運転免許証を検索してくれ」と言った。 「誰をですか」と訊くので「滝沢俊一だ」と言った。 「いいですよ。その前に飯を食べに行ってもいいですか」 「いいよ。私もこれから弁当を…
十八 一週間が過ぎた。誰も僕のデスクにはやってこなかった。それもそのはずだった。犯人の指紋かDNAが残されているものであれば、もうとっくに逮捕されているからだった。 未解決事件は、そういった証拠が残されていないものが多かった。 そうしているう…
十七 それから三十分後、僕は未解決事件捜査課の自分のデスクに座っていた。昼の愛妻弁当は食べ終わっていた。 あやめから送ってもらっていた映像を、さっそく再生していた。 被害者の映像はそんなに長くはなかった。何が起こっているのか分からないうちに殺…
次回は、10月31日木曜日にアップの予定です。
十六 これで、まだ未解決事件を解決していないのは、横井寺生だけになった。 「横井、何かあるか」と訊くと、彼は机から立ち上がってファイルを持ってきた。 「これなんかどうですか」と言って、開いて見せたのは、六年前に黒金町で起きた、一家四人の惨殺事…
十五 神田は結城を刺したことは認めた。ただ、殺意の有無で、取調は平行線になった。 そのまま午後五時が来たので、今日の取調は終わった。 未解決事件捜査課に戻ると、沢村と村瀬が待っていた。それぞれ捜査資料を出して、一度にしゃべろうとしたから、僕は…
十四 神田と弁護士の接見は一時間に及んだ。その結果、取調は午前十時十分から始まった。その間に、僕は、沢村孝治には埼玉の北福岡署に、村瀬幸広には、千葉の南習志野署に行かせた。もちろん、神田の毛髪のDNA鑑定書も持たせた。それぞれの署に残されて…
十三 次の日、鑑識から結果が届いていた。被害者の右手の爪の間に残されていた皮膚片のDNAと神田の毛髪のDNAが一致した。これで令状が取れる。 午後になって令状が下りると、神田を逮捕するだけだった。だが、神田がどこにいるか分からなかった。 昨日…
十二 葛西は北歌舞伎町二丁目のマンションに住んでいた。 ドアチャイムを押すと、若い女が出てきた。 「警察の北川です。葛西さんはいますか」と北川が警察手帳を見せて言った。 「いないわよ」と女は言った。 「嘘ですよね」と僕が言った。女が寝乱れていた…
十一 月曜日になった。 まだ、未解決事件を解決していない北川雄一と横井寺生がうずうずしていた。未解決事件の資料箱をあさっては、自分に向いた事件がないか探していた。 そうこうしているうちに午後五時になった。今日は剣道の稽古の日だった。剣道の道具…
十 救急車で病院に向かった。 僕に致命傷はなかったが、気付かない擦り傷が上半身に沢山あった。ワイシャツはボロボロだった。 秋山は打撲している程度で、入院するほどのことはなかった。 秋山は逃走したことで現行犯逮捕した。岬から飛び込んだことで、村…
九 西新宿署に戻ると、僕は昼食をとったが、杉山は令状の交付に裁判所に電話をかけていた。今日のうちに交付してもらえることになった。 僕は和歌山県警に電話をして、そちらに向かうことを伝えた。その後で、北部署に電話をし、明日、午後一時四十七分、北…
八 定時に未解決事件捜査課に行くと、杉山が待っていた。 「おはようございます」 「おはよう」 「これをご覧ください」と杉山は、事件ファイルを差し出してきた。『明慶大学女子学生刺殺事件』と書かれていた。三年前に起きた事件だった。 「村瀬さんが担当…
次回は、10月25日金曜日にアップの予定です。
七 村瀬が大家を連れて来た。 「大家の渡辺です、山村さんなら交通事故に遭われて、亡くなられましたよ」と言った。 「それはいつですか」と僕は訊いた。 「一年ほど前です」 「そうですか」 「部屋の荷物は、ご家族が持って行かれましたよ」と大家は言った…
六 午前九時に出署して未解決事件捜査課に行くと、みんなすでに来ていた。 僕は手を叩いて、みんなをデスクに集めた。 「未解決事件を調べ直すとしても、一つ方針があることを伝えておく。この間、中里孝司の事件を解決できたのは、DNAという証拠があった…
五 午後三時には、取調も終わった。後は取調調書を作成して、中里孝司に内容を確認させて、拇印を押させるだけだった。 それは明日行う予定だった。その時には、綿棒を使った口腔内細胞の採取の結果も出ていることだろう。中里孝司に言い逃れる余地はなかっ…
四 午前九時に、西新宿署の未解決事件捜査課に行った。 メンバーはすでに来ていた。 中里孝司の取調は午前十時からだった。 その時、鑑識から電話がかかってきた。僕が取ると、「昨日の検体ですが、九十八%の確率で一致しました」と言った。 「報告書はでき…
三 坂下の工場を辞めた後は、中里孝司は黒金町の盛り場でバーテンダーをやっていた。坂下の工場を辞めたのは、坂下と金の貸し借りで揉めたからだった。結局、中里は坂下からは、金は借りられなかった。中里は工場が終わると、バーテンダーのアルバイトをした…
二 「坂下さんは何をしていたんですか」と僕は沢村に訊いた。 「この近くで工場を弟さんとやっていましたよ」と言った。 「その工場はどうなりましたか」と訊いた。 「確か、弟さんが継いだと思いますがね」と答えた。 「工場の従業員の唾液も採取しましたか…
僕が、警察官ですか? 5 麻土 翔 一 四月になって、僕は黒金署の安全防犯対策課から、西新宿署の未解決事件捜査課に異動になった。 未解決事件捜査課は西新宿署の地下一階にあった。道場がある階と同じだった。 未解決事件捜査課が地下にあるのは、事件ファ…
三十五 島村が狙いをつけたと思った瞬間、僕は時を止めた。 そして、走って行き、ズボンからハンカチを出して、銃を取り上げ、ハンカチを使って、撃鉄を降ろした。そして、銃身で島村の頭を思い切り叩いた。ひびが入ったのが分かった。島村は立ったまま気絶…
三十四 一月五日になった。僕はご祝儀を持って、タクシーでお茶の水の****ホテルまで行った。式は午前十一時から始まる予定だった。その三十分ほど前に着いた。控え室には、岸田信子と、峰岸康子の母が車椅子に乗って来ていた。 僕は二人に挨拶をして、…
三十三 家に帰ると、「レンタルのベビーベッドは明日届くわよ」と母が言った。 「へぇー、いつ頼んだの」と訊いた。 「赤ちゃんが生まれてすぐよ」と母は言った。 「手回しがいいんだな」と言うと、「こういうことはわたしの方が慣れているからね」と言った…
三十二 次の日、安全防犯対策課に行くと、鈴木が「何がいいか決まりましたか」と訊いた。 「哺乳瓶とキューブ型のミルクがいいって妻は言っていた」と言った。 「それじゃあ、明日までに買っておきますね」と鈴木は言った。 鈴木は忘年会のことで頭がいっぱ…
三十一 次の日、安全防犯対策課に行くと、メンバーは揃っていた。 みんな僕の方を向いていた。昨日、妻の出産のために安全防犯対策課を離れたことを誰もが知っていた。 「おはよう」と言うと、全員が「おはようございます」と返してきた。 「昨日、妻が午前…