2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧
二十六 安全防犯対策課に戻ると、緑川に「これから、西新宿署に行くことになった。そのまま自宅に帰ることになるかも知れないので、後のことはよろしく。それから、交通安全課に今日が水曜日だから、パトロールを強化して欲しいと申し入れてくれ」と言った。…
二十五 僕は、警察のデータから過去に起きた女性絞殺事件を調べたことを話した。その中で、引っ掛かったのが、秋田で起こった二件の絞殺事件だった。 僕はこの土日に、秋田の男鹿に旅行に行ったことを西森に話した。そして、昨日、事件の起こった西秋田市の…
二十四 東京駅には、午後八時三十二分に着いた。自宅にいれば、もうとっくに夕食の時間だった。新幹線の中で売り子が来たので、弁当を買って食べようと思ったが、昼間も弁当だったから、子どもたちに可哀想な気がした。東京駅から四谷三丁目までは三十分ほど…
二十三 しばらく待っているとひょうたんが震えた。 「読み取りました」とあやめが言った。 「だったら、映像を送れ」と言った。 「はい」と答えた。 映像が頭の中に入り込んできた。クラクラとした。しばらくすると、それに慣れ、そして落ち着いた。 被害者…
二十二 金生閣に入ると、旅館の者がお辞儀をしてすぐに寄ってきた。 名前を言うと「鏡様ですね。菊の間にお連れします」と言った。 菊の間と聞いて、僕はきくと顔を見合わせて笑った。 旅館の者が「何でございましょうか」と言うので、僕は「いや、何でもな…
二十一 次の日、安全防犯対策課にいると、午後二時頃、携帯に電話がかかってきた。 「はい、鏡ですが」と言うと「西森です」と言う声が聞こえてきた。 「今、北府中署にいます」と言った。 「北府中市の絞殺事件を調べているんですね」 「そうです。朝一に来…
二十 お昼を食べ終えると、早速ネットで男鹿にある旅館を探して、親子四人が泊まれるところを予約した。金生閣という旅館だった。四人で六万円ほどかかった。夕食と朝食がついていた。それから、新幹線の指定席も取った。東京駅から秋田駅までだった。 きく…
十九 西新宿署から四谷五丁目の自宅まで、歩いて帰る途中のことだった。 どうしても頭に引っ掛かるものがあることが分かった。それが何なのかはよく分からなかった。しかし、何か引っ掛かるのだ。 時計を見た。歩き出して、まだ十五分経ったぐらいだった。新…
十八 府中の警察学校を午後四時に出た。 覆面パトカーに乗って、西新宿署に向かった。 西新宿署には、午後五時少し過ぎに着いた。 すぐに地下の練習場に降りて行き、更衣室で道着に着替えた。その時、竹刀ケースの中で袋に包まれている定国を触った。定国か…
十七 朝、起きるのが辛かった。しかし、今日は黒金幼稚園で防犯キャンペーンがある日だった。 行く義務はないが、課長として部下のしているところを見に行かないわけにはいかなかった。 リビングルームに入って行き、「おはよう」と言った。 きくは「おはよ…
十六 昼食後は、しばらく遊んだ後、最後の事件現場に向かった。東椿ヶ丘公園だった。 南椿ヶ丘公園からは、二十分とかからなかった。 駐車場に車を置くと、子どもたちを公園に連れていった。 きくが僕の隣に来ると、「今日はお仕事をされているんですね」と…
十五 駐車場に車を置き、ききょうと京一郎を公園に連れて行くと、手を離して走り出していった。 「ここで、お昼にしますか」ときくが訊いた。 「そうだな。そうしよう。午後一時頃、食べられるようにしてくれ」と言った。 そして、車のキーをきくに渡した。…
十四 退署し、家に帰ると、きくとききょうと京一郎が出迎えてくれた。 寝室で背広を脱ぎながら、「今度の土曜日なんだが、北府中市にドライブしに行こうと思うんだが、どうだろう」と言った。 「珍しいですわね、あなたがドライブしようなんて言うのは。でも…
十三 署に戻り、買ってきた制汗剤の製品名をメモしているうちにお昼になった。 僕は、愛妻弁当を持って、屋上に上がっていった。そして、いつものベンチに座った。 今日は卵をハートマークの型に入れて焼いたものが載せられていた。それを人に見られないよう…
十二 安全防犯対策課に戻ると、滝岡の解析は終わっていた。 「この二つの自転車は同一のものです。メーカー名まではわかりませんでしたが、同じメーカーでおそらく六、七年ぐらい前に作られたものです。ここのマークを見てください。この二つを重ねると、一…
十一 僕がソファの方に移動していると、黒金幼稚園に行っていた三人が帰って来た。 「ただいま、戻りました」と緑川が言った。鈴木浩一と並木京子はそのまま自分のデスクに向かった。 緑川が残り、僕の前のソファに座った。報告をするためだった。 「どうだ…
十 次の日、定時に出署すると、安全防犯対策課に入った。すでに皆、来ていた。 「おはようございます」と言う声があちらこちらからした。 緑川が来て「今度の日曜日に行う防犯キャンペーンについて向こうと打ち合わせに行こうと思っていますが、いかがでしょ…
九 西沢奈津子は、激しく抵抗した。顔を左右に振って、声を出そうとした。しかし、その口は黒い革手袋で塞がれていた。 そのうち、首にロープが巻かれた。男は手慣れていた。 西沢はハンドバッグを投げ捨て、そのロープをはずそうと両手でロープを掴もうとし…
次回は、8月23日金曜日にアップの予定です。
八 定時に退署して、午後五時半には家に帰った。 「お帰りなさい」ときくとききょうと京一郎が出迎えてくれた。 二人に手を引かれて、玄関から廊下に上がった。 ききょうと京一郎はそのままダイニングルームに入って行き、きくは僕と一緒に寝室に来た。背広…
七 安全防犯対策課に入ると、皆、すでに来ていた。 もうすぐ六月になる。そうすれば防犯キャンペーンを黒金幼稚園と保育所でしなければならなくなる。すでに、花村幼稚園でやっているから、それと同じようにやればいいだけのことだった。 今、安全防犯対策課…
六 家に帰り着いたのは、午後八時頃だった。 僕は射撃訓練や剣道をしてきたので、風呂に入りたかったが、僕が帰ってくるまで、夕食をとるのを待っていてくれた子どもたちのために食事を先にすることにした。 夕食の後、風呂に入った。子どもたちはきくが入れ…
次回は、8月21日水曜日にアップの予定です。
五 月曜日になった。 安全防犯対策課に入って行くと、緑川がやってきた。 「これが日程です」と言って、一枚の紙を差し出した。 黒金幼稚園と保育所の防犯キャンペーンのスケジュール表だった。 黒金幼稚園の方は来月の第一日曜日で、黒金保育所の方は第二日…
四 水曜日に、安全防犯対策課に行くと、署長からお呼びがかかった。 昨日の防犯キャンペーンに何か問題でもあったんだろうかと思いながら、署長室に向かった。 入って行くと、ソファに座るように言われた。 女性巡査がお茶を運んできた。 僕の前のソファに、…
三 パンフレットは、緑川が昨年の物も参考に原案を作り、滝岡順平がレイアウトを作成した。それを署のプリンターで二百部印刷した。 幼稚園児が三十五名。保母さんが十五名。お母さん方が皆来るとして、三十五名。老人会の人も来ると言う。その他の人に配る…
二 「今日は近藤さんは使わないんですか」 きくがそう言った。 「ああ」 「どうしてですか」 「きく、もう一人子どもが欲しくはないか」と僕は訊いた。 きくは、「わぁ」と言って、僕に抱きついてきた。 「欲しいです。何人でも」と言った。 「そうか。じゃ…
僕が警察官ですか? 2 麻土 翔 一 僕は公務員試験総合職に合格した。 そして、警察庁に入った。キャリア組は警察大学校で研修を受け、その後、一年間の交番勤務を経て、再び警察大学校の研修を受けた。その後、各地に配属された。 配属される時に、希望を書…
十五 午後五時のニュースで、新宿区西新宿の路上で午前一時半頃、警察官が発砲されるという事件が起きたことがトップニュースで流れた。 警察官は無事で、発砲した高島研三容疑者がその場で逮捕されたことが伝えられた。 ニュースを聞いていたきくが、「その…
十四 明日は、午前一時から午前九時までの勤務だった。 午前七時に起きて、子どもたちと一緒に朝食をとった。その後で「お昼はいらない」と言って眠った。 午後三時頃、子どもたちは帰ってきた。僕も起きた。 子どもたちと一緒におやつを食べた。蒸かし芋だ…