小説「僕が、警察官ですか? 4」

都合により、しばらくアップをお休みします。 可能になりましたら、十三章より再開します。

小説「僕が、警察官ですか? 4」

十二 駅に向かって歩きながら、あやめと話した。 「考えてみれば、あやめがやったことは刑事が尋問をしていて、犯人を落とすときと同じことだな。それを直接、意識の中でやるから、効果はてきめんだったんだ」と言った。 「そうですよ。わたしだけでなく、主…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

十一 このままでは、高橋丈治の思うとおりの方向に取調は進んでいきそうだった。 時を止めた。 「あやめ。取調官の意識を送れ」と言った。 「わかりました」と言った。 取調官の意識が流れてきた。 取調官浅井は、高橋丈治がすんなりと轢き逃げを認めたこと…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

十 次の日、黒金署の安全防犯対策課に行った。 デスクに座ると、品川署から電話がかかってきた。岸田信子からだった。 「鏡課長ですか」 「はい、私です」と僕は言った。 「おはようございます」と岸田が言った。 「おはようございます」と返した。 「車の鑑…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

九 僕はデスクに手をついて、前のめりになって、青木に顔を近づけた。 「私が何者か、知りたいでしょう。どうして秘密にしていることが分かるのか、不思議でしょうがないでしょう。それはこうして話しているからですよ。あなたのことは隅から隅まで調べてき…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

八 青木運送の受付で、警察手帳を見せて、「社長にお会いしたいんですが」と言った。 「ちょっとお待ちください」と言って、受付の女性は内線電話をかけた。 そして、電話をかけ終わると、「どうぞ。あの建物の三階です」と奥の建物を指さして言った。 僕は…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

七 緑川に「捜査二課に行ってくる」と言って、安全防犯対策課を出た。 捜査二課は三階にあった。 二課のドアを開け、近くにいた女性に警察手帳を見せて、「安全防犯対策課の鏡京介ですが、安達祐介さんをお願いします」と言った。 女性警察官は「ちょっと、…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

六 交通事故の現場は、凉城恵子の意識から分かっていたので、事故現場に向かった。 凉城恵子の家の近くだった。そこには縦の掲示板が立っていた。 『二〇**年**月**日午前七時十五分頃、ここで轢き逃げ事件が起きました。青い車を見た人は、****ま…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

五 NPC田端食品株式会社の本社を出ると、新宿駅に向かった。 新宿駅から北大井駅に向かった。大石庫男が言っていた建築中のビルは、電車からも見えた。 電車を降りると、その建築中のビルに向かった。 建築現場の歩道で警備に当たっていた人に、警察手帳…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

四 次の日、出署して安全防犯対策課に行った。 デスクに着くと、早速携帯を取り出した。 まず、石原知子に電話した。 「はい、石原です」と気怠そうな声が聞こえてきた。 「私、黒金署の安全防犯対策課の鏡京介と言います」と言った。 「警察の方?」 「はい…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

三 家に帰って、すぐに風呂に入った。僕は長風呂だった。つい考え事をしてしまうからだった。京一郎とも一緒に入らなくなっていた。 今回のリストアップされていた人についても考えていた。 事件後、NPC田端食品株式会社は株式の上場が認められなくなって…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

二 三十六名に絞られた者の事情聴取ファイルは、箱の奥にあった。ファイルの背表紙が見えるように入れてあればいいのに、横向きになっていたので、見付けにくかった。 捜査記録のファイルも一応、写真に撮った。二百ページにもなっていた。 写真類も写真に撮…

小説「僕が、警察官ですか? 4」

僕が、警察官ですか? 4 麻土 翔 一 十月になった。 安全防犯対策課は暇だった。僕は毎日、あやめの入っているひょうたんを持ち歩くようになった。あやめの能力が便利だったからだ。 月曜日の剣道の稽古の後に、西新宿署捜査一課一係の刑事である西森幸司郎…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十八 九月になった。 全国警察剣道選手権大会がやって来た。 剣道具の竹刀ケースの中には、定国を袋に詰めて入れてきた。 九月**日火曜日に日本武道館で、午前九時から開催された。 開始前のセレモニーの後、八会場に分かれて、百七十人近くの全国の警察…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

次回は、9月20日火曜日にアップの予定です。

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十七 安全防犯対策課に戻ると、退署時間になっていた。僕は鞄を取ると、「お先に」と言って、安全防犯対策課を出た。 家では、きくが出迎えてくれた。 「お風呂になさいますか」と訊くので、「そうしよう」と答えた。 「塩辛って食べますか」と訊くので、…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十六 次の日、黒金署に行くと、署内は大変なことになっていた。いろんな部署の電話が鳴りっぱなしだった。それにマスコミが押しかけていた。署に入って行こうとする僕にまで、マイクを向けられたから、「何のことだか分からない」と答えて、署内に逃げ込ん…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十五 土日も取調は続いているだろう。金曜日の弁護士との接見から、中上は自分のアリバイを主張していることだろう。二係はその裏を取るために休みを返上して働いているに違いない。 月曜日の午前中には、きっと捜査会議がある。そこで、土日の成果が発表…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十四 僕は中上が逮捕されたことで、ひとまずホッとした。 家に帰り、風呂に入って、リビングでビールを飲んでいた。 しかし、二つ問題は残っている。前の三件の連続放火事件については、中上は犯人ではない。ただ、このうち、二件は中上にアリバイがあるか…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十三 ひょうたんが震えた。あやめが戻ってきたのだ。 「映像を送ってくれ」と言った。 興奮していたためか、目眩はしなかった。中上は「そうか」と言って、警視庁のサイトにアクセスした。当然、IDとパスワードが求められる。中上は考えた。すると、初代…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十二 署に戻って、安全防犯対策課に行った。デスクの椅子に座ると、先程の映像を再生した。 中上は、幾つも新聞を買っていた。そこにトップ記事で載っていたのは、放火事件のことだった。 書いている記者も、事情が分からずに書いているものだから、連続放…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十一 一週間は何事もなく過ぎた。きくも保護者参観を無事に終えることができた。ききょうの授業は国語で、ききょうが指名されて家族という作文を読んだそうだ。警察官である父は具体的に何をしているのか分からないが、母はいつも気配りができていて、大変…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

二十 僕は中上のアパートの近くの通りで、ズボンのポケットのひょうたんを叩いた。 「中上の様子を見てきてくれ」と言った。 「はーい」とあやめは言った。 中上が何をしているかは分かっていた。山田の釈放はどうでも良かったのだろう。問題はそれに対する…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十九 家に着き、出迎えてくれたきくに鞄を渡すと、「今日、山田さんが釈放されましたね」と言った。 「テレビを見ていたのか」 「ええ。それに新しい声明文も出されましたね」 「そうだな」 「警察の方は大変じゃありませんか」 「大変だと思うよ」 「まるで…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十八 家に着いた。きくが出迎えてくれた。ひょうたんはズボンのポケットから鞄の中に移しておいた。 風呂に入った。 浴槽で考えた。 滝岡が、上手く偽サイトを作れたら、そこに中上を引き寄せて、彼を捕まえる。中上の犯罪は、一見すると放火事件だけのよう…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十七 僕は愛妻弁当を食べ終わると、水筒のお茶を飲んだ。 この後、どうなるのかは予想がついた。山田の弁護士が釈放要求書を持ってくる。それに反対する理由がなければ、山田は釈放される。無罪放免というわけではない。罪については保留という形が取られる…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十六 夕食をとった後も、僕は寝付けなかった。 ウィスキーを飲みながら、午後十一時からのニュースを見ていた。すると、犯人から「第二信が届きました」と言うキャスターの上ずった声が聞こえてきた。 「しばらく、お待ちください」と言って、別のニュースに…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十五 午後一時になると、ズボンのポケットにひょうたんを入れて、緑川に「ちょっと出てくる」と言って安全防犯対策課を出た。 四階の待合席に行った。午前中に僕に声をかけてくれた女性に目礼して、席に座った。 ズボンのポケットのひょうたんを叩いて、「さ…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十四 自宅に戻ったのは、午後十一時半を過ぎていた。 きくは起きて待っていた。 「寝ていればいいのに。躰にさわるよ」と言うと、きくは「病気じゃないんだから、大丈夫です」と応えた。 椅子から立ち上がろうとすると、きくが「ウィスキーを飲みたいんでし…

小説「僕が、警察官ですか? 3」

十三 五月中旬を過ぎようとしていた。山田の自供を取れずに、捜査一課二係は焦っていた。山田の勾留期限はあと僅かだった。こうなれば、山田は頑張り通すだろう。自供が取れなければ、釈放するしかなくなる。しかし、僕は毎日のように山田を陰から応援してい…