2024-01-16から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

六十五 除夜の鐘はテレビをつけたまま、ベッドの中で聞いた。 私も真理子も汗まみれだった。私は絹のように滑る真理子の肌を何度撫でただろうか。 そして、その度に真理子も何度声を上げた事だろう。 私たちは躰を重ねたまま朝を迎えた。 昼間、私たちはダイ…

小説「真理の微笑」

六十四 大晦日、起きたのは昼を過ぎていた。昨夜というより、朝まで私は真理子を抱いていた。 腕が痺れていた。何度、真理子の中に気をやった事だろう。何度してもしきれないくらい、真理子は魅力的だった。 真理子の上げる、あの切ないような声がまだ耳の底…

小説「真理の微笑」

六十三 次の日、真理子の提案で、千葉の房総にある富岡の母の施設を訪ねた。 富岡の母はベッドに寝ていたが、私が来ると起こされて、車椅子に座った。 私と富岡の母とは車椅子で庭に出た。 その施設の庭からは、雄大な海が水平線まで見えた。風が強かった。 …