2025-01-01から1ヶ月間の記事一覧
次回は、1月14日火曜日にアップの予定です。
二十六 金曜日の夕方、病院に行くと午後六時頃、主治医である中川医師の回診があった。数人の医師が後ろについてきていた。 「富岡さんの二度の手術は上手くいき、経過も順調です。腎臓が悪いのが気にかかりますが、治療を続けていけば良くなるでしょう。た…
二十五 翌日、保険会社への手紙をポストに投函すると、病院に富岡を見舞ってから、会社に行った。 社長室に入って、しばらくするとお茶を運んできた滝川が「社長の手術はどうでしたか」と訊くので、「無事終わったわ」と答えた。 「それはよろしかったですね…
二十四 日曜日らしい日曜日を過ごした真理子は、月曜日に病院に寄った。午前八時を少し過ぎた頃だった。 秋月医師と湯川医師から話があるというのは、土曜日に聞いた留守電で知っていたので、二人が現れるのを待った。 ナースステーション前のソファに座って…
二十三 高木が社長室から出ていこうとする時、真理子は明日の土曜日に会社に来られないことを思い出した。 「高木さん」と声をかけた真理子は、事情を話して「それで土曜日には会社に来られないので、お願いしますね」と言った。 「そういうことでしたら、わ…
次回は、1月9日木曜日にアップの予定です。
二十二 真理子は、午後一時になると、須藤のところに電話した。 真理子の提示した二百万円という数字は、当然予想していたよりもかなり低かったのだろう。しばらく沈黙が続いた。その沈黙の中には、怒りもあっただろう。 やがて須藤が「条件があるが聞いても…
二十一 手術の翌日、午前九時に社長室に入ると、滝川がお茶を運んできて、「手術はどうでしたか」と訊いた。 「上手くいったわ」と答えた。 「それはよろしかったですね」 「心配してくださっていたのね」 「それは、もちろんです」 真理子が「ありがとう」…
二十 水曜日は午前七時には目覚めた。 今日が最初の難関だということはわかっていた。ただ、真理子の心の中は醒めていた。心配をするという気持ちは、欠片ほどもなかった。だが、その演技はしなくてはならなかった。七、八時間の演技は、結構疲れるだろう。…
十九 秋月と湯川とのやり取りは、一時間ほどで終わった。 今日は、これで帰ると滝川に言ってきたので、会社に戻る気にはなれなかった。時間が空いた。ナースステーションに行き、一目、富岡を見て帰れないかと話した。面会時間以外なのでと言われたが、一人…
十八 真理子が起きたのは、午前十時を過ぎていた。 午前中のアリバイ作りは失敗したが、午後には面会に行こうと思った。ただ、あの富岡の様子では、時間を潰すのが難しそうだった。何か文庫本でも持っていって読んでいようと思った。 午後の面会から帰ってき…
十七 真理子は、午後三時前に家を出て、病院に行くと六階のナースステーションに行ってから、富岡の病室を訪れた。 もちろん、手指のアルコール消毒は済ませてのことだった。 椅子に座り、包帯にくるまれた富岡を見ていた。胸のあたりまで薄い毛布が掛けられ…