2026-02-01から1ヶ月間の記事一覧
十四 神田と弁護士の接見は一時間に及んだ。その結果、取調は午前十時十分から始まった。その間に、僕は、沢村孝治には埼玉の北福岡署に、村瀬幸広には、千葉の南習志野署に行かせた。もちろん、神田の毛髪のDNA鑑定書も持たせた。それぞれの署に残されて…
十三 次の日、鑑識から結果が届いていた。被害者の右手の爪の間に残されていた皮膚片のDNAと神田の毛髪のDNAが一致した。これで令状が取れる。 午後になって令状が下りると、神田を逮捕するだけだった。だが、神田がどこにいるか分からなかった。 昨日…
十二 葛西は北歌舞伎町二丁目のマンションに住んでいた。 ドアチャイムを押すと、若い女が出てきた。 「警察の北川です。葛西さんはいますか」と北川が警察手帳を見せて言った。 「いないわよ」と女は言った。 「嘘ですよね」と僕が言った。女が寝乱れていた…
十一 月曜日になった。 まだ、未解決事件を解決していない北川雄一と横井寺生がうずうずしていた。未解決事件の資料箱をあさっては、自分に向いた事件がないか探していた。 そうこうしているうちに午後五時になった。今日は剣道の稽古の日だった。剣道の道具…
十 救急車で病院に向かった。 僕に致命傷はなかったが、気付かない擦り傷が上半身に沢山あった。ワイシャツはボロボロだった。 秋山は打撲している程度で、入院するほどのことはなかった。 秋山は逃走したことで現行犯逮捕した。岬から飛び込んだことで、村…
九 西新宿署に戻ると、僕は昼食をとったが、杉山は令状の交付に裁判所に電話をかけていた。今日のうちに交付してもらえることになった。 僕は和歌山県警に電話をして、そちらに向かうことを伝えた。その後で、北部署に電話をし、明日、午後一時四十七分、北…
八 定時に未解決事件捜査課に行くと、杉山が待っていた。 「おはようございます」 「おはよう」 「これをご覧ください」と杉山は、事件ファイルを差し出してきた。『明慶大学女子学生刺殺事件』と書かれていた。三年前に起きた事件だった。 「村瀬さんが担当…
七 村瀬が大家を連れて来た。 「大家の渡辺です。山村さんなら交通事故に遭われて、亡くなられましたよ」と言った。 「それはいつですか」と僕は訊いた。 「一年ほど前です」 「そうですか」 「部屋の荷物は、ご家族が持って行かれましたよ」と大家は言った…
六 午前九時に出署して未解決事件捜査課に行くと、みんなすでに来ていた。 僕は手を叩いて、みんなをデスクに集めた。 「未解決事件を調べ直すとしても、一つ方針があることを伝えておく。この間、中里孝司の事件を解決できたのは、DNAという証拠があった…
五 午後三時には、取調も終わった。後は取調調書を作成して、中里孝司に内容を確認させて、拇印を押させるだけだった。 それは明日行う予定だった。その時には、綿棒を使った口腔内細胞の採取の結果も出ていることだろう。中里孝司に言い逃れる余地はなかっ…
四 午前九時に、西新宿署の未解決事件捜査課に行った。 メンバーはすでに来ていた。 中里孝司の取調は午前十時からだった。 その時、鑑識から電話がかかってきた。僕が取ると、「昨日の検体ですが、九十八%の確率で一致しました」と言った。 「報告書はでき…
三 坂下の工場を辞めた後は、中里孝司は黒金町の盛り場でバーテンダーをやっていた。坂下の工場を辞めたのは、坂下と金の貸し借りで揉めたからだった。結局、中里は坂下からは、金は借りられなかった。中里は工場が終わると、バーテンダーのアルバイトをした…
二 「坂下さんは何をしていたんですか」と僕は沢村に訊いた。 「この近くで工場を弟さんとやっていましたよ」と言った。 「その工場はどうなりましたか」と訊いた。 「確か、弟さんが継いだと思いますがね」と答えた。 「工場の従業員の唾液も採取しましたか…
僕が、警察官ですか? 5 麻土 翔 一 四月になって、僕は黒金署の安全防犯対策課から、西新宿署の未解決事件捜査課に異動になった。 未解決事件捜査課は西新宿署の地下一階にあった。道場がある階と同じだった。 未解決事件捜査課が地下にあるのは、事件ファ…
三十五 島村が狙いをつけたと思った瞬間、僕は時を止めた。 そして、走って行き、ズボンからハンカチを出して、銃を取り上げ、ハンカチを使って、撃鉄を下ろした。そして、銃身で島村の頭を思い切り叩いた。ひびが入ったのが分かった。島村は立ったまま気絶…
三十四 一月五日になった。僕はご祝儀を持って、タクシーでお茶の水の****ホテルまで行った。式は午前十一時から始まる予定だった。その三十分ほど前に着いた。控え室には、岸田信子と、峰岸康子の母が車椅子に乗って来ていた。 僕は二人に挨拶をして、…
三十三 家に帰ると、「レンタルのベビーベッドは明日届くわよ」と母が言った。 「へぇー、いつ頼んだの」と訊いた。 「赤ちゃんが生まれてすぐよ」と母は言った。 「手回しがいいんだな」と言うと、「こういうことはわたしの方が慣れているからね」と言った…
三十二 次の日、安全防犯対策課に行くと、鈴木が「何がいいか決まりましたか」と訊いた。 「哺乳瓶とキューブ型のミルクがいいって妻は言っていた」と言った。 「それじゃあ、明日までに買っておきますね」と鈴木は言った。 鈴木は忘年会のことで頭がいっぱ…
三十一 次の日、安全防犯対策課に行くと、メンバーは揃っていた。 みんな僕の方を向いていた。昨日、妻の出産のために安全防犯対策課を離れたことを誰もが知っていた。 「おはよう」と言うと、全員が「おはようございます」と返してきた。 「昨日、妻が午前…
三十 定時になったので、安全防犯対策課を出て、家に帰った。 きくが出迎えてくれた。 僕はきくに昼間、岸田信子から電話があったことを話した。そして、彼女の弟の結婚式に出ることを約束したことを伝えた。 「もう、その女の人とは会わないと約束しました…
二十九 一ヶ月が経った。十二月も半ばを過ぎていた。 剣道の稽古は十二月の上旬で今年のは終わっていた。来年は一月下旬から始まることになっていた。 きくのお腹も大きくなっていた。 島村勇二は相変わらず捕まらなかった。 峰岸康子の母は入院して治療して…
二十八 月曜日になった。 剣道の道具と鞄を持って、家を出た。 定時に安全防犯対策課に入った。 メンバーは揃っていた。 「おはよう」と言って、僕はデスクに座った。 そこに岸田信子から携帯に電話がかかってきた。 「おはようございます。今、大丈夫ですか…
二十七 パンケーキは美味しかった。 峰岸康子も泣き止んで、パンケーキを食べ始めた。すぐに「美味しい」と言った。 秀明もパンケーキを食べた。 「本当だ。美味しい」と言った。 岸田信子はホッとしたように、パンケーキにナイフを入れた。 「凄くふんわり…
二十六 お昼になった。 安全防犯対策課のメンバーは誰も帰ってこなかった。いつもは屋上のベンチで昼食をとるのだが、今日は誰もいないので、デスクで弁当を広げた。 鶏そぼろと炒り卵の二色弁当だった。きくは鶏そぼろでハートマークを作っていた。 昨日の…
二十五 午後五時になったので、安全防犯対策課を出て、家に帰った。 きくが出迎えてくれた。 「子どもたちは」と訊くと、「プリントをしています」ときくは答えた。 「そうか。相変わらず、教育ママをやっているんだな」と僕は言った。 「教育ママって何です…
二十四 安全防犯対策課に戻ると、緑川が防犯安全キャンペーンのキャラクター募集のチラシ原稿を持ってきた。 それを見て、僕は「ああ、これでいい」と言った。 「じゃあ、これをプリンタで印刷して配りますね」と緑川は言った。 「そうしてくれ」と言った。 …
二十三 次の日の朝のテレビのトップニュースは、警察官射殺未遂事件だった。ニュースでは、帰宅途中で狙われたとなっていた。狙われた警察官の氏名は公表されなかった。 犯人の重森昭夫と、彼に狙撃を指示したと見られる島村勇二については、詳しく報じられ…
二十二 定時になったので、僕は剣道の道具と鞄を持って、安全防犯対策課を出て、西新宿署に向かった。 西新宿署の近くまで来ると、建物が取り壊されて更地になっている所が多くなってくる。そこを歩いている時だった。嫌な予感がした。そして、突然、ズボン…
二十一 定時に黒金署の安全防犯対策課に行った。 午前十一時に、悟堂の家に実況検分に行くことになった。 ききょうがどのように連れ去られたかは、すでに検分済みだった。 悟堂の家で、続きの実況検分は行われた。当日の様子が再現されていた。 僕は、門から…
二十 定時になったので、鞄を取って安全防犯対策課を出た。 家に向かっていつものように歩いていた。 すると、ズボンのポケットのひょうたんが震えた。 「どうした」と僕は言った。 「誰か主様をつけてきています。邪念を持っています」と言った。 「そうか…