2023-12-13から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

十二 後で特別個室であると知ったが、看護師が入ってきて、「お名前を言ってください」と言った。私は富岡と言おうとしたが、うまく声が出せなかったので、真理子が代わって「富岡修です」と言った。 「では、検温しましょう」と、年輩の看護師は体温計を振…

小説「真理の微笑」

十一 私は富岡を殺した後、その死体を彼の車のトランクに入れて別荘から離れた場所に埋めるつもりだった。リュックには折りたたみのスコップを入れていた。都内の自宅とはおよそ離れた所にある量販店で買い入れたものだった。今度の計画に必要なものはすべて…

小説「真理の微笑」

十 山頂近くは霧深かった。車は麓の人気ない駐車場に止めておいて、バスで途中まで来てから、あとは徒歩で彼の別荘に向かった。初めから殺害計画を持っていたので、車で直接彼の別荘に向かうのは避けた。 人造湖を見おろす位置に建つ別荘はすっかり霧に包ま…