小説「真理の微笑」

四十二

 一週間が過ぎた。

 月曜日の午前中に、教授回診があって、それぞれの担当医が教授に説明をしていた。私の内臓の数値は、良くなってきてはいるが、まだ高いという事だった。特に腎臓と肝臓がまだ悪いようだった。心電図は安定しているという事だった。リハビリは順調に進んでいると理学療法士が言った。声の方も腫れは順調に治っているという事で、掠れ声はもうしばらくすればなくなるだろうと言っていた。

 あけみは水曜日に来た。化粧を薄めにした素顔に近いあけみの方が、若さが引き立って可愛く見えた。フェラチオをしたがったが、私が頑強に拒んだ。その代わり、あけみのクリトリスを思い切りいたぶった。あけみは、何度か絶頂に達した。

 あけみが帰っていくと、私はナースコールをした。トイレに行くためだった。余韻が残っている内に自分で射精した。その後、石けんでよく手を洗う事も忘れなかった。

 夏美とはパソコン通信でメールのやり取りをした。夏美は何度も会いたいと書いてきたが、私は会えないと書き送るしかなかった。そして、パソコン通信している事を警察には決して言わないように書き送った。捜索願は出したままにしておくように、とも付け加えた。

 何もしないのが一番だったのだ。

 辛かったのは、父親が失踪している事で祐一がいじめられているとメールに書かれていた事だった。会いに行けるものならそうしたかった。病院の場所を教える事ができるものならそうしたかった。しかし、富岡を殺した私には、それができなかった。

 家の改修が始まったようで、真理子が病院に来たのは、金曜の夜だった。会社も来週からは新しい場所で活動を始める。

 私は、そうした一切合財を病院から見守るしかなかった。