小説「真理の微笑 夏美編」

四-一

『隆一様

 メモ通りに設定しました。わたしには難しくて、よくわからないところもありましたが、何とか終える事ができました。このメールが無事届くといいですね。

 今、わたしたちは埼玉のわたしの実家にいます。祐一は転校してきたばかりで、まだ友達はいないようです。

 会社は倒産しました。自宅を売却して、借金は清算しました。それでわたしたちは埼玉の実家に移り住みました。

 あなたが帰ってこない日曜日からの日々は、わたしにはとても辛い毎日でした。あなたの事が心配でなりませんでした。だから、この前、電話をもらった時はとても嬉しかった。あなたの声は聞き取りにくく、とても変わってしまいましたが、あなただとすぐにわかりました。今わたしが望む事はあなたに会いたい、その一言です。でもあなたは会えないと言う。今のわたしにはそれが理解できません。どうして会えないのですか。ぜひ、教えてください。わたしはあなたが帰って来る事を待っています。いつまでも。 夏美』