四十八
夜が明けていた。
昨夜は、何度、抱き合ったことだろう。真理子にも、過去に記憶がないほどだった。
真理子は化粧台に行き、髪をとかした。昨日、化粧台の鏡に映った自分と今の自分を比べてみた。何かが変わったような気がした。それが何かはわからなかった。
高瀬が起きたことに気付いた真理子は「おはよう」と言った。高瀬も「おはよう」と返した。
「昨日のあなたは凄かったわね。あんなの、何年ぶりかしら」
高瀬は言葉に困っていたようだった。
何も言わない高瀬に、真理子は「ううん、初めてだったかも知れない」と言った。
高瀬が「ねぇ」と声をかけてきた。
真理子が「なあに」と振り向いた。
「真理子の裸が見たい」
高瀬のその言葉に真理子は驚いた。
「恥ずかしいわ」
真理子はそう言った。
「見たいんだ」
「こんなに明るいのに」
「お願いだ」
真理子は高瀬の顔を見た。富岡の顔をしていたが、その目は子どものようだった。しばらく逡巡していたが、やがて真理子は立ち上がると、着ていた物を足元に落とした。
「こっちに来て」と高瀬が言うので、真理子はそのまま、ベッドサイドに行った。
高瀬は真理子の躰に手を伸ばした。そして、腰のあたりを触った。
「もっと寄って」と高瀬は言った。
真理子は片膝をついてベッドに上がろうとすると、高瀬は「そのまま」と言った。
何だろうと、真理子が思っていると、高瀬は真理子の割れ目に指を這わせてきた。
「恥ずかしい」と真理子は言った。
「ベッドに上がって」
真理子はベッドに上がった。
高瀬は、真理子をベッドに上げると、右手で下を触りながら、左手で胸を揉んだ。
高瀬は真理子の足を広げると、上になって自分のものを真理子の中に入れた。
真理子は自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
高瀬はゆっくりと、躰を動かした。
そのうち真理子は宙に浮いていた足を、自然に高瀬の腰に巻き付けていった。
高瀬が躰を動かすと真理子もそれについて動いた。
やがて、真理子は激しく顔を左右に振った。そして口を突き出した。高瀬の唇を求めたのだった。
高瀬がそれに応えると、躰の中の高瀬が一段と膨らんでくるのがわかった。
高瀬が射精をするのと同時に、真理子も「いく」と叫んでいた。
会社が始まるのは二日後だった。真理子は二日間は高瀬と二人きりだった。
初めてセックスを覚えた者同士のように、真理子と高瀬はセックスを貪るようにしあった。
昼食もピザをとることにした。
配達してもらったピザを受け取る時、真理子はバスローブに簡単に羽織れる物を身につけて玄関で受け取ると、二人で、ダイニングで食べた。
「夕食はどうする」
ピザを食べながら夕食の話をしている。
高瀬は「出かけるのも面倒くさいし、また何か頼もう」と言った。
真理子が「何がいい」と訊くと、高瀬は「鰻」と答えた。
「どうして。あっ、わかった。精力つけたいんでしょ」と真理子が言うと、「違うよ。鰻も病院では食べられなかったんだ」と高瀬が言った。
「じゃあ、そうしましょう」
午後も、果てない饗宴はいつまでも続いた。