小説「真理の微笑」

五十三

 朝になっていた。眠剤を飲まないでも昨夜は眠れた。

 あれからどれほど真理子を抱いただろう。

 真理子は化粧台にいて、髪をとかしていた。私が起きた事に気付くと「おはよう」と言った。私も「おはよう」と返した。

「昨日のあなたは凄かったわね」

 私はちょっと嬉しかった。いや、凄く嬉しかった。

「あんなの、何年ぶりかしら」

「…………」

「ううん、初めてだったかも知れない」

 その言葉を聞いた時、嬉しかったが、同時に少しひやりとした。富岡はあんなふうには真理子を抱かないんだ、と思ったからだ。しかし、富岡がどんな抱き方をしたかなんて分からない以上、自分のやり方を貫くしかなかった。いや、貫くべきなのだ。これからは、私の抱き方が富岡の抱き方だったと思わせればいいのだ、と思った。

 昨夜の種火が、私の躰の中に残っていた。真理子はバスローブしか着ていない。

「ねぇ」

 私は声をかけた。

「なあに」

 真理子が振り向いた。

「真理子の裸が見たい」

 思いきって言った。真理子は驚いたようだ。

「恥ずかしいわ」

「見たいんだ」

「こんなに明るいのに」

「お願いだ」

 真理子はしばらく逡巡していたが、やがて立ち上がると着ていた物を足元に落とした。

 美しい裸体だった。

「こっちに来て」

 真理子は裸のまま、ベッドサイドに来た。

 私は真理子の躰に手を触れた。最初は腰のあたりだった。

「もっと寄って」

 真理子は片膝をついてベッドに上がろうとした。その時、割れ目がはっきりと見えた。明るい中でそこを見たのは初めてだった。

「そのまま」

 私はそう言うと、真理子の割れ目に指を這わせた。

「恥ずかしい」

 真理子は俯いてそう言った。真理子の割れ目は綺麗なピンク色をしていた。

 触っているうちに濡れてきたのが分かった。

「ベッドに上がって」

 真理子は言われるままにベッドに上がった。

 ベッドに上げると右手でクリトリスを触りながら、左手で胸を揉んだ。

 真理子の肌は、微妙な光沢を放っていた。

 私は真理子の足を広げ、上になってペニスを真理子の割れ目に入れた。

 真理子の顔が赤く染まっていくのが分かった。

 なるべく腰を使わないようにして、躰を動かした。

 私は真理子の顔を見ていた。上気して感じていく真理子の顔が見たかったのだ。

 そのうち真理子は足を私の腰に巻き付けてきた。私と真理子は密着した。

 私はそのままにして、まるで腕立て伏せをするかのように躰を動かした。

 真理子が激しく顔を左右に振ったかと思うと、口を突き出してきた。私はその唇を吸って舌を絡めた。私の額からは汗が噴き出していた。

 そのうち、躰の奥の方が熱くなってきてペニスが一段と膨らんだ。

 私が精液を吐き出している時に、真理子も「いく」と叫んでいた。

 

 会社に出るのは二日後だった。だからこの二日間は真理子と二人きりになれるのだった。

 昼間はピザを頼んで配達してもらった。

 真理子はラフな格好で玄関に出て受け取ると、二人でダイニングで食べた。

「夕食はどうする」

 ピザを食べながら真理子がそう訊くので、「出かけるのも面倒くさいし、また何か頼もう」と答えた。

「何がいい」

 私はしばらく考えて「鰻」と答えた。鰻も病院では食べられなかったものの一つだった。

「じゃあ、そうしましょう」

 

 午後も、私たちは性行為を覚えたばかりの若者と何ら変わらなかった。

 さすがに、何度も射精はできなかったが、私は真理子の躰の隅々まで指を這わせた。

 まるで子どもが新しいおもちゃを与えられたのと同じだった。

 飽きる事なくそうしている私を、真理子は黙って許してくれていた。『しょうがないわね』とでも思ったかも知れない。

 実際、真理子の裸身は何度見ても見飽きる事がなかった。

 真理子を四つん這いにして後ろから見た光景は、忘れられないものの一つだった。

 真理子はとても恥ずかしがったが、そうすればそうするほど私は欲情した。

「もう、駄目」

 時間を忘れてそうしているうちに、さすがに真理子は疲れたようでベッドに倒れた。

 そして私の方を向いて「このやんちゃさん」とペニスを上から押した。