小説「真理の微笑」

五十二

 夕食は出前で寿司を頼んだ。病院では食べられなかったからだ。

 大トロも美味しかったが、ウニやいくらもうまかった。これでお酒でも飲めたら最高だったが、肝臓の数値が悪いので、医者からはきつく禁酒を言い渡されていた。

 夕食の後は、風呂に入った。

 脱衣所で私は裸になると、真理子に支えられて、風呂場に入った。真理子は濡れてもいい服装で、私をシャワーで全身洗った。それから低くした浴槽に片足ずつ入れて、躰を浴槽に運ぶと、私は半分ほどはった湯に浸かった。

 今まではシャワーだけだったので、風呂に浸かるのが気持ちよかった。真理子はしゃがんで「どぉ」と訊いた。私は上を向いて「ああ、いい気持ち」と答えた。

 

 風呂から上がるのは、少し苦労した。私は湯船に付けられている手すりを掴んで、躰を持ち上げ、真理子が洗い場に引き上げてくれた。それから真理子に支えられて、脱衣所のタオルが敷いてある椅子に腰掛けた。頭や上半身は自分でも拭けたが、足は真理子が拭いてくれた。それからトランクスをはき、パジャマを着た。椅子から車椅子に躰を移して、寝室まで移動した。

 車椅子から真理子に支えられて立ち上がると、そのままベッドに倒れ込んだ。大きなダブルベッドだった。

 私はベッドの中に入ると、真理子を待った。真理子は私を入浴させた後で、風呂に浸かっているのだろう。その時間が結構長く感じた。

 そう感じながら、私は何を期待しているのだろう、と思った。これから真理子と眠るだけじゃないか、と思おうとした。だが、真理子を抱きたいという欲望は、そんな事をすれば富岡ではないと分かってしまうかも知れないではないかという理性を裏切っていく。

 真理子の入浴時間は長かった。その間中、私は欲望と理性との戦いをし続けなければならなかった。

 ようやく真理子が寝室に入ってきた。髪をタオルで巻いて包んでいた。

「ごめんね、遅くなって」

「そんな事ないよ」

 真理子は浴衣のような素材のバスローブを身につけていた。鏡台で顔に化粧水を付けてからベッドに来た。私の奥に躰を横たえた。そして寝室の灯りを消した。

 まだ午後九時を少し過ぎた頃だった。

 私は真理子に手を伸ばした。腕に触った。その手を下ろしていき、真理子の手を握った。そして、力強く引いた。

 真理子は躰をずらした。握っていた手を離して、真理子のバスローブをはだけた。

 真理子は下着を着けていなかった。より引き寄せて腰に手を回した。そして抱き寄せた。

 その時、パジャマが邪魔をした。私は、パジャマのボタンを外してそのあたりに放り投げた。そしてトランクスと一緒にパジャマのズボンも脱ぎ捨てた。

 真理子の裸の胸に胸を密着させて、唇を合わせた。唇を合わせながら、真理子の胸を揉んだ。その胸はふくよかで驚くほど柔らかかった。指が沈み込んでいった。

 真理子の「あ~」という小さな声が耳朶を過っていった。

 それほど大きくはない乳首をつまんでいた。次第に真理子の乳首は立ってきた。

 のけぞる真理子の喉を唇でなぞった。そして、また真理子の唇を吸った。

 舌を絡めた。真理子も巻き付けるように舌を絡めてきた。

 乳首から指を離すと、すうっと躰の線をなぞるように下ろしていった。そして真理子の割れ目に指を這わせた。

 そこはもうすっかり濡れていた。人差し指と中指を割れ目の中に入れた。そして、しばらく出し入れをした。真理子は泣くような声を上げた。

 それから真理子のクリトリスを擦りあげた。真理子の声は一層、大きくなった。

 私は我慢ができなくなっていた。

 真理子の股を大きく広げるとその上にのし掛かっていった。

 ペニスは硬くなっていた。そのペニスを真理子の中に押し込んだ。

 そして腰を動かそうとしたが、痛くなって上手く動かせなかった。

 仕方がないので、躰を反転させて真理子を上にした。真理子は何も言わず、腰を動かした。そのうちに真理子が上半身を被せてきて、唇を求めた。私は真理子の口を受け止めた。真理子の舌が激しく蠢いていた。私は今にも爆発しそうになっていた。やがて、真理子は口を離して「ああ」と叫んだ。その声に導かれるように私も射精していた。

 私の胸に顔を落とした真理子は「良かったわ」と言った。私も頷いた。

「まだ硬いわね」

 私は射精した後でも、まだ立ったままだった。

 真理子は、また腰を動かし始めた。私は真理子の背中の真ん中を中指でなぞるように腰まで、ゆっくりと下ろしていった。真理子が感じているのが分かった。私も痛くならない程度に腰を動かした。そして真理子の胸を揉んだり、脇の下を触ったりした。

 どれほど時間が経っただろうか。今度はさっきよりも時間がかかった。しかし、真理子が深く感じ始めて、唇を求めてくると、自然に私も気持ちが高揚していった。

 今度は「いく」とはっきりと言った。真理子の躰がピクンと動いたのが分かった。私もその時、再び真理子の躰の奥深くに射精していた。

 真理子は私の躰の上から降りて、横に転がった。私は左手で真理子のクリトリスをいじっていた。次第にそれが硬くなってくるのが分かった。

「また」と真理子は囁いた。

「真理子となら、何度でもしたい」

 そう言うと、真理子は鼻から息を吐き出すように薄く笑った。

「いいわ、好きなだけしてあげる」

 そう言うと、真理子はまた覆い被さってきた。