小説「真理の微笑 夏美編」

五-三
 七月には夏美に郵便書留で大きめの硬い材質の封筒が送られてきた。住所も名前も電話番号もでたらめだったが、封筒の裏の隅に「Ryu」と書かれていたので、高瀬からのものだとわかった。
 開けて見ると、A四版の白紙の紙の束の間に五百万円もの大金が入っていていた。手紙はどんなに探してもなかった。
『隆一様
 突然、大きな封筒が送られてきて驚きました。あなたからだというサインを見つけた時、わたしは胸が躍りました。あなたからは五百万円もの大金が送られてきました。お金は無事届きました。しかし、わたしが欲しかったのは、あなたからの手紙でした。どんなに探しても見つかりませんでした。わたしが燃やすことをぐずったからでしょうか。でも、わたしはあなたからの手紙が欲しかったです。そして何よりも、あなたに会いたい。そればかりを思っています。  夏美』
『夏美へ
 お金が無事に届いてホッとしている。
 お前たちは元気で暮らして欲しい、それだけが今の俺の願いだ。  隆一』
『隆一様
 久しぶりにメールを頂き、何度も読み返しました。わたしも祐一も元気に暮らしています。心配しないでください。ただ、わたしも祐一もあなたと一緒に暮らしたい。それができる日を望んでいます。すぐに一緒に暮らせないのだとしても、会うことだけは叶いませんか。あなたに会いたくて仕方のない夏美です。どうか夏美の願いを聞き届けてください。  隆一』
 高瀬は、現金が届いた事を確認した後、夏美には一切メールを送る事はなかった、夏美がメールだけでも送って欲しいといくらせがんでも。