五-一
十二月の中頃、夏美の元へ高瀬から分厚い封筒で三百万円の現金が送られてきた。
『隆一様
素敵なクリスマスプレゼントありがとう。三百万円、確かに受け取りました。あなたの書かれた住所も電話番号も、名前のようにでたらめでしたね。電話をかけたけれど、現在使われていませんというメッセージが流れてきたわ。あなたの手紙も読みました。何度もよ。封筒は焼き捨てました。でも、あなたの手紙はどうしても焼けませんでした。 夏美』
『夏美へ
こうしてメールしている事も危険なんだ。頼むから、手紙は焼き捨ててくれ。そうしてくれなければ、もうメールは送らないし、お金も送らない。永遠にお前たちと別れる。そうするしかなくなる。書いた事は必ず守ってくれ。 隆一』
『隆一様
あなたの手紙はもう読むことができないくらい、わたしの涙で文字が霞んでしまいました。それでもその手紙をあなたが書いたのだと思うと、これまではどうしても焼き捨てる事はできませんでした。
庭の片隅で枯葉を集めて、火をつけました。あなたからの手紙が燃えていくのを、涙で霞んでいく中に見ました。初めは少しずつ燃え、やがてそれは大きな炎となりました。わたしはその頃には、子どものようにわんわんと泣いていました。 夏美』