2023-03-28から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 夏美編」

六 十月の上旬だった。夏美の実家に茅野の警察署の刑事が二人訪れた。 二人は、島崎と高橋と警察手帳を見せて名乗った。 島崎の野太い声から、いつか電話で話をした刑事だと夏美にはわかった。 二人を座敷に通すと、挨拶もそこそこに夏美はすぐに「主人は見…

小説「真理の微笑 夏美編」

五-三 七月には夏美に郵便書留で大きめの硬い材質の封筒が送られてきた。住所も名前も電話番号もでたらめだったが、封筒の裏の隅に「Ryu」と書かれていたので、高瀬からのものだとわかった。 開けて見ると、A四版の白紙の紙の束の間に五百万円もの大金が入…

小説「真理の微笑 夏美編」

五-二 五月のある日、夏美は父と母を手伝って畑に出て農作業をしていた。 先程から、畑を見下ろせる場所にタクシーのようなものが止まっているのを夏美は知っていた。だが、それが介護タクシーだとはわからなかった。 そのタクシーは止まったまま、後部座席…