小説「僕が、剣道ですか? 2」

二十七-2

 いったん、子どもたちの隠れている洞窟まで戻った。
 佐野助もいた。
「食べ物があるか」と訊くと、干し芋を出してきた。それに齧り付いた。
「どうですか。何人やったんですか」
「三十人ほど斬った」
「すげー」
「弱い奴らだけだ。本隊はまだ三十人近くいる」
 水も飲んだ。
「もうすぐ、暮れますぜ」
「奴らを寝かせる気はない」

 山間の村はすっかり暗くなっていた。
 かがり火が焚かれていた。
 いくつかの家にあかりが見えた。
 あばら屋に鍋を見つけたので、村の端の木から吊り下げて、太い枝で打ち鳴らした。
 山賊たちが出てきた。こっちはすぐに近くの茂みに隠れた。そして「お前たちに、明かす夜はないぞ」と叫んだ。
「こしゃくな」と音のする方に走り出そうとした者を「待て」と止めた者がいた。
「相手はこちらを誘い出そうとしているのだ。その手には乗らん」
 山賊は散った。
 僕は散っていく方向を見ていた。
 特に家の中に入っていく者を確認した。
 あかりのついている家の壁に身を寄せた。そして、中の様子を伺った。
 女が見えた。男の肌も見えた。男は一人じゃなかった。三人いた。三人の男が一人の女を嬲り者にしていた。
 僕は刀を抜くと、戸を蹴破り、三人の腹を裂いた。
 その音に気付いて、次々と戸が開いた。その時は、僕は家から抜け出していた。
 しかし、家の近くにいた。
 中を見た山賊が「飛田衆は俺たちを嬲り殺す気だ」と言った。
「そうだな。わざと致命傷を与えて、すぐには殺さない」
「おーい。今夜、襲ってくるぞ」

 僕は次の家の壁に貼り付いていた。中の様子を見た。女が見えた。布団を被っていた。三人がいた。
 周りを見た。戸を蹴破り、三人を斬って逃げ出せるか考えた。隣の家も見た。やはり女がいて、此所にも三人いた。
 その隣の家も見た。やはり、三人だった。
 三人一組になっていた。
 中に女がいなければ、家に火をつけて、あぶり出せばいいのだが、それができない。
 やるしかなかった。端の家の戸を蹴破り、素早く三人の腹を刺した。だが、戸口に出ようとした時には、六人に囲まれていた。六人は、家に火をつけた。僕は中に入り、家の壁を蹴破り、女を連れ出した。
 しかし、そっちにも人がいた。
「もう逃げられないぞ」
 そう言った奴は、言い終わらぬうちに、自分の腹を裂かれていた。
 その左右にいた者もどこかしら斬った。
 女の手を引いていては、戦えなかった。手を離した。
 その瞬間に女が斬られた。