2024-01-29から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 真理子編」

十八 真理子が起きたのは、午前十時を過ぎていた。 午前中のアリバイ作りは失敗したが、午後には面会に行こうと思った。ただ、あの富岡の様子では、時間を潰すのが難しそうだった。何か文庫本でも持っていって読んでいようと思った。 午後の面会から帰ってき…

小説「真理の微笑 真理子編」

十六 土曜日に、病院の三階にあるICU前のナースステーションに行くと、富岡は六階のHCUに移されたと聞いた。 HCUとはICUと一般病棟の中間的な位置に存在する高度治療室のことで、ナースステーションに行くと、富岡の容態が安定したことと、水曜…

小説「真理の微笑 真理子編」

十五 会社には午後一時に着いた。 社長室に入ると、高木を呼んだ。 午前中に出社できなかったことを詫びた。 「そんなことをお気にされなくても」と高木は言った。 「わたしがいなくても何とかやっていけるってことよね」と真理子が言うと、高木は何も言えな…