2023-01-27から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

六十四 大晦日、起きたのは昼を過ぎていた。昨夜というより、朝まで私は真理子を抱いていた。 腕が痺れていた。何度、真理子の中に気をやった事だろう。何度してもしきれないくらい、真理子は魅力的だった。 真理子の上げる、あの切ないような声がまだ耳の底…

小説「真理の微笑」

六十三 次の日、真理子の提案で、千葉の房総にある富岡の母の施設を訪ねた。 富岡の母はベッドに寝ていたが、私が来ると起こされて、車椅子に座った。 私と富岡の母とは車椅子で庭に出た。 その施設の庭からは、雄大な海が水平線まで見えた。風が強かった。 …

小説「真理の微笑」

六十二 十二月二十八日は朝から会社は騒々しかった。夜には忘年会があるし、年明け早々に新年会がある。その新年会に向けての準備にも余念がなかった。 私が「仕事納めなんだから、ちゃんと気を引き締めてやれよ」と言っても効き目はなかったようだ。 真理子…