2021-07-07から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 夏美編」

十八 六月になった。 判決が申し渡される事になった。「主文、被告人高瀬隆一を懲役八年の刑に処する。罪状、殺人及び死体遺棄罪、罰条、刑法第**条**項及び、刑法第**条**項。……」 主文が言い渡されると、報道陣は一斉に法廷を出ていった。 弁護側…

小説「真理の微笑 夏美編」

十七 傍聴席にいた夏美は、証人としてあけみが現れた時は、心穏やかではなかった。真理子の存在だけでも、いっぱいいっぱいのところにあけみが現れたからである。そして、あけみが「ここでそれを言えと言うの。男と女の事だからわかるでしょ」と言った時は、…

小説「真理の微笑 夏美編」

十六-2 三番目の証人は、あけみだった。 証人席に立つと弁護士から「お名前は」と訊かれたので、「あけみで~す」と答えたら、傍聴席から、微かに笑いの声が上がった。「源氏名はいいですから、本名を答えてください」「浅井さやかです」 人定質問が終わっ…