2024-03-01から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 夏美編」

二十一 帰りの電車の中では、夏美は涙を流しているところを人に見られるのを隠すのに苦労した。 祐一を連れて来なくて良かったと思った。最初に面会した時は、嬉しさと弁護士がいた事でわからなかったが、こうして一人で高瀬に面会に来ると、会っているのに…

小説「真理の微笑 夏美編」

十八 六月になった。 判決が申し渡される事になった。 「主文、被告人高瀬隆一を懲役八年の刑に処する。罪状、殺人及び死体遺棄罪、罰条、刑法第**条**項及び、刑法第**条**項。……」 主文が言い渡されると、報道陣は一斉に法廷を出ていった。 弁護側…

小説「真理の微笑 夏美編」

十七 傍聴席にいた夏美は、証人としてあけみが現れた時は、心穏やかではなかった。真理子の存在だけでも、いっぱいいっぱいのところにあけみが現れたからである。そして、あけみが「ここでそれを言えと言うの。男と女の事だからわかるでしょ」と言った時は、…