2023-12-12から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

九 病院に現れた北村の奥さんはまだオムツの取れない赤ん坊を抱いていた。おんぶひもに支えられて指をしゃぶりながら眠る男の赤ちゃんを見ていて、祐一の赤ん坊時代を思い出していた。八年前の私は、大手の子会社のソフトウェアの会社で働いていた。同世代の…

小説「真理の微笑」

八 我が社のプロジェクトは極秘に進められていた。画期的な技術とアイデアだったと思う。この頃のパソコンは、スタンドアローン(個々に独立して他のPCとつながっていないPC)的に使われる事が多かった。イントラネット(企業内におけるプライベートネッ…

小説「真理の微笑」

五 「手を離さないでよ」 祐一だった。六歳の時だった。 小学生になったら自転車の乗り方を教えてやると言っていた。でも、友達の多くはもう自転車に乗っていた。三輪車をとっくに卒業した彼には、補助輪のついた自転車は、いたく自尊心を傷つけていた事だろ…