2023-04-04から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 夏美編」

二十一 帰りの電車の中では、夏美は涙を流しているところを人に見られるのを隠すのに苦労した。 祐一を連れて来なくて良かったと思った。最初に面会した時は、嬉しさと弁護士がいた事でわからなかったが、こうして一人で高瀬に面会に来ると、会っているのに…

小説「真理の微笑 夏美編」

二十 一週間後、夏美は祐一を連れて、刑務所に午前八時半に着いた。高瀬隆一との面会手続きを取ろうとしたら断られた。 何故断られたのか理由を尋ねると、月二回の面会回数を超えるからだと言われた。誰か他に高瀬隆一に面会に来ている者がいるという事にな…

小説「真理の微笑 夏美編」

十九 警察から押収された品物が返却されてきた。 夏美は、それを二階の高瀬の自室となるところに収めた。 八月半ばになって、高瀬と面会できる事になった。弁護士事務所から連絡が来たのだった。 面会室のアクリル板越しに見る高瀬は、少し、いやだいぶ若返…