2024-04-09から1日間の記事一覧

小説「僕が、剣道ですか? 2」

十九ー1 風呂場でも、きくの説教は延々と続いた。 「堤先生を勝たせたかったんでしょ」 「そういう訳じゃないが」 「他にどういう訳があるんですか」 「いろいろだ。いろいろあるんだ」 「どういろいろあるんですか」 「あるだろう」 「例えば、おたえさん…

小説「僕が、剣道ですか? 2」

十八 審判である番頭の中島伊右衛門が張り上げた「鏡京介殿の負け」の声はあたりに響いた。 そして、次に響めきが起こった。意外な形で決着が付いたからだった。 僕は木刀を拾い「静かに」と叫んだ。 響めきが収まった。何が起こるのか、みんなが注視してい…

小説「僕が、剣道ですか? 2」

十七 御前試合の日が来た。 僕は着慣れぬ袴を穿き、城に向かった。 外の城郭を回り込んで、内庭に出た。広かった。 その中央にお殿様が背もたれのない椅子のようなものに座っていた。両側に重臣たちも同じように座っていた。 周りには、家臣がずらりと取り囲…