2024-01-17から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

六十九 十九日になって由香里が出産した。 陣痛がきたからこれから病院に行くという電話が、午前中の会社にいた私宛に由香里からあった。私は急ぎの仕事を片付け、高木に後の事を任せて病院に向かったが、電話から四時間ほどは経っていただろうか。病院に着…

小説「真理の微笑」

六十八 次の日は、昨日の新年会の興奮がまだ社内に残っていた。あの後、飲み会に行った者も多かったに違いない。カラオケをやり過ぎて私のようにガラガラの声で挨拶する者もいた。 社長室に入ると、真理子は「また迎えに来るからね」と言って帰っていった。 …

小説「真理の微笑」

六十七 新年会は午前十時に始まる。 私と真理子はその一時間前にホテルの控え室に入った。控え室の中はごった返したようだった。出し物をするグループが隅の方で、最後のチェックを行っていた。 広報の中山がやってきて、「今日は一生懸命、司会を務めさせて…