2023-03-03から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 真理子編」

三十七 社長室を除いて、相変わらず会社は騒然とした中で仕事は続けられていた。 午後になって、高木が新社屋の資料をプリントアウトしたものを持ってきた。 「一応、十二件ほどの物件をピックアップしてみました」 「そう。じゃあ、早速、富岡に見せるわね…

小説「真理の微笑 真理子編」

三十六 真理子が会社に行くと、高木と田中を社長室に呼んだ。 二人が入ってきて、椅子に座ると、早速、真理子が切り出した。 「昨夜、富岡と話したんだけれど、会社移転しようっていうことになったの」 「会社移転ですか」 二人同時に、椅子から飛び上がるよ…

小説「真理の微笑 真理子編」

三十五 火曜日の午前八時半頃に、真理子は病室に入っていった。富岡は朝食を済ませていて、看護師がその御膳を片付けに来ているところだった。 ショルダーバッグに入れてきた手帳とインタビュー記事が載った雑誌を、真理子は「これでいい」と渡すと、富岡は…