2023-01-26から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

六十一 会社に戻るとしばらくは由香里の事が頭を離れなかった。 由香里は道路まで出て、介護タクシーが角を曲がるまで手を振っていた。顔や全体の感じは違っていたが、何となく夏美を思わせる雰囲気を由香里は持っていた。「わたしは今のあなたが好き」とい…

小説「真理の微笑」

六十 十二月二十七日になった。今日は、ハウスクリーニングがある日だった。 十一時半に介護タクシーを呼んで、由香里のアパートに行った。 由香里の部屋は一階だった。電話で二階と聞いたら、どこかレストランで会う事にしようと思っていた。由香里はお腹が…

小説「真理の微笑」

五十九 次の日、会社に出ると、まだ前日のパーティの雰囲気が抜けないのか、全体的に浮かれたような感じだった。酒が抜け切れていない社員もいた。 だが、私は何も言わず、社長室に入った。お茶を秘書室の滝川節子が出してくれた。 「新しい場所に会社が移っ…