2021-08-13から1日間の記事一覧

小説「僕が、剣道ですか? 1」

二十三-1 朝餉の後は、家老はすぐに城に戻っていった。 僕は島田源太郎に、きくを連れて町に出てもいいか、尋ねた。「昨日の父の話を気にしているのか」と訊かれた。「そういう訳ではありません」と答えたが、家老の嫡男だけあって、なかなか鋭いなと思っ…

小説「僕が、剣道ですか? 1」

二十二-2 庭に出て真剣で素振りをした。 切っ先が空間を切っていく感じが心地良かった。 正眼の構えから下段に切っ先を落とし、下から切り上げてみた。どの切り方をしても相手には僕の剣は見えないだろう。と言って、わざと剣をゆっくり動かしても、本気で…

小説「僕が、剣道ですか? 1」

二十二-1 道場は活気づいていた。百人を二組に分けて、一日置きに五十人ずつが道場に稽古に来ていた。 選抜試験をしたためか、緊張感があった。 彼らは素振りの練習をしていた。場所がないため、同じ位置にいての打ち下ろしだった。 僕は、一度、練習を止…