2022-12-05から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

十三 自分の顔を見るのが嫌だった。三十数年培ってきた感覚からしても、元の方がましだったと思えるのに、殺した人間の顔になるなんて最低だった。これから先は、いつも鏡という、そこら中にある恐怖に脅かされながら、暮らさなければならないのだ。窓ガラス…

小説「真理の微笑」

十二 後で特別個室であると知ったが、看護師が入ってきて、「お名前を言ってください」と言った。私は富岡と言おうとしたが、うまく声が出せなかったので、真理子が代わって「富岡修です」と言った。 「では、検温しましょう」と、年輩の看護師は体温計を振…