十 山頂近くは霧深かった。車は麓の人気ない駐車場に止めておいて、バスで途中まで来てから、あとは徒歩で彼の別荘に向かった。初めから殺害計画を持っていたので、車で直接彼の別荘に向かうのは避けた。 人造湖を見おろす位置に建つ別荘はすっかり霧に包ま…
九 病院に現れた北村の奥さんはまだオムツの取れない赤ん坊を抱いていた。おんぶひもに支えられて指をしゃぶりながら眠る男の赤ちゃんを見ていて、祐一の赤ん坊時代を思い出していた。八年前の私は、大手の子会社のソフトウェアの会社で働いていた。同世代の…
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