2022-11-24から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

二 混乱に陥っていた私に声が聞こえた。 「あなた、わたしよ」 不意に頬に手が触れて、女の顔が現れた。しかし私には見覚えがなかった。いや、そう言えば時々この病室に足を運び、包帯越しに私の顔に触れた女があったのを思い出した。そして、遠い記憶の底か…

小説「真理の微笑」

真理の微笑 麻土 翔 一 事故があった。車が崖から落ちたのだった。 ひと月、意識がなかった。二週間、意識の混濁の中にいた。 そして、今日私は医師の手に依って解放された、六週間私の顔を覆っていた包帯から。 名前を呼ばれた気はしたが、よくわからないま…

小説「僕が、警察官ですか? 5」 

二十四 沢村からは山のように質問が来たが、僕はまともには答えられなかった。ただ、警察官の勘だと言うだけだった。 沢村を押しのけるように鞄から、愛妻弁当と水筒を取り出すと十階のラウンジに上がっていた。 翌日になった。朝、未解決事件捜査課に行くと…