2021-06-06から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 真理子編」

五十四 次の日、真理子は、千葉の房総にある富岡の母の施設を訪ねることを提案した。 高瀬にとって、富岡の母は何の関係もなかった。それは真理子も承知していた。しかし、高瀬が富岡の母を訪ねておくことも、この先必要になってくるかも知れないと思ったの…

小説「真理の微笑 真理子編」

五十三 十二月二十八日は忘年会がある日だった。 会社に高瀬を送り届けた後も真理子は会社に残った。朝から会社は騒々しかった。 真理子は車椅子を押して、高瀬と社長室に入った。「毎年、こうなのか」と高瀬が真理子に訊くので、「知らないわ。朝から来るの…