2024-02-26から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 夏美編」

二 二ヶ月と十日ほど経とうとしていた頃だったろうか、午後四時頃に突然、居間の電話が鳴った。 夏美は庭にいて洗濯物を取り込んでいた。 夏美は洗濯物を縁側に置くと、居間に駆け上がり、受話器を取り上げた。高瀬からの電話だと思ったのだ。 「もしもし、…

小説「真理の微笑 夏美編」

真理の微笑 夏美編 一 七月最初の土曜日の午後だった。高瀬は「じゃあ」と笑顔で車に乗って、蓼科に向かって出発した。 夏美は「気をつけて行ってきてね」と言い、高瀬の車が角を曲がるまで手を振っていた。 高瀬は翌日のお昼頃には帰ると言っていた。しかし…

小説「真理の微笑 真理子編」

六十二 トミーワープロはバージョンも重ねて、さらに売れ続けた。そして、六年後には、新宿区に新社屋を建てた。 落成式は盛大に行われた。 猛は有名な私立小学校に入学した。 その年に二人目の子どもが七月に授かった。女の子だった。絵美と名付けられた。 …

小説「真理の微笑 真理子編」

六十一 九月も終わろうとしていたその日、真理子は朝食にパンケーキを焼いていた。 赤ちゃんは高瀬の車椅子の隣で、ゆりかごの中で眠っていた。 高瀬は新聞紙を熱心に読んでいた。 パンケーキが焼けると、真理子は微笑みながら、「あなたぁ、焼けたわよ」と…