2023-12-15から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑」

十八 病室に戻って考えた。 今までは、富岡を知る事を避けてきた。というよりも逃げていた。自分が殺した奴の事など知りたくもなかったからだ。忘れる事ができるなら、そうしたかった。 しかし、今日のような事があればどうする。相手を知らずして、どう対応…

小説「真理の微笑」

十六 「今日は、午後二時頃だと思いますが採血があり、その後レントゲンを撮ります」 そう看護師が言って、膳を持って出ていった。 朝食が済んだ後に、車椅子が運ばれてきて、二人がかりで車椅子に座った。 病室から出るのは初めてだった。車椅子に乗り、六…

小説「真理の微笑」

十五 次の日、体温と脈拍を測りに来た看護師に起こされた。午前七時を少し過ぎた頃だった。 昨夜は何時に眠ったのだろうか。窓の外が明るくなり出した頃だった記憶がある。 夢の中で、私は夏美や祐一と食卓で歓談していた。たわいもない話だった。たわいもな…