2021-09-10から1日間の記事一覧

小説「僕が、剣道ですか? 1」

三十九 大きく咳をした。 目を開けると僕はベッドの上にいた。「意識が戻ったわ」と女の声が聞こえた。「先生を呼んで来なくちゃ」とその声は言った。 間もなく医師が来た。 目を開いて光を当てた。 僕は眩しくて目を閉じようとした。「じっとしていて」と言…

小説「僕が、剣道ですか? 1」

三十八 屋敷に戻ると僕はすっかり疲れていた。 風呂に入った時も眠りかけていた。 きくが抱きつき「よく、ご無事でお戻りなされました」と言った。 きくが出してくれた中年の女中に作らせた紺色のトランクスを穿き、着物を着た。 夕餉の席では、佐竹が威勢良…

小説「僕が、剣道ですか? 1」

三十七 次の朝、道場に行くと相川と佐々木を呼んだ。そして、これから城中に向かうことを伝えた。「無事、帰ってこられるかは、分からない」「そんな」と相川も佐々木も驚いた。「そこで、道場の後のことは二人に任せた」「急にそんなことを言われても」と相…