小説「真理の微笑」

四十七
 カード型データベースソフトは、β版を作れるところまで来ていた。概ね、(株)TKシステムズで作っていたカード型データベースソフトを下敷きにしていたが、ユーザーインターフェイスをトミーワープロに合わせたために、メニュー構造が大幅に変わった。
 一番、腐心したところは、入力しやすくするためテンプレートを増やした事だ。
 できる事なら、トミーワープロ表計算もどきの機能を付けたので、それと連動させたかったが、ソフトが重くなるというので諦めた。その代わり、トミーソフト株式会社で作ったデータをCSV(カンマ区切りデータ)ファイルに落とし、それをカード型データベースソフトに読み込めるようにした。
 午前中に、西野と遠藤を病室に呼んで、ラップトップパソコンでプロトタイプのカード型データベースソフトを起動させた。そして、メールでは伝えにくい修正するべき箇所を表示させては、指示をしていった。二人には小型のプリンタを持ってこさせていたので、画面をスクリーンショットで写し撮って、プリントアウトさせては、そこに指示した事を書き込ませた。
 午前十二時になって昼食が運ばれてくるまで、作業は続いた。私が食事を取っている間も二人は、隅で話をしていた。私は食べ終わると薬を飲み、再び、作業を開始した。
 二人は先程二人で話した案を提示してきた。CSVファイルなどのファイルを変換して保存するところを、エクスポート(書き出し)とか、インポート(取り込み)とかいうメニューを使うのではなく、ワープロみたいに保存メニューに「保存形式」という項目を作って、そこに「CSV形式」などとすればいいのではないかと言ってきた。もちろん、インポートとかエクスポートを別メニューにするよりも分かりやすいだろう。
 ただ、これは実際に作ってみなければ、その方が操作性がいいのかどうかは分からない。
「じゃあ、そのようにメニュー体系を作り替えてみて、いいかどうかチェックしよう」
「わかりました」
「次のバージョンのトミーワープロは住所録も付けられるようにするつもりだ。これは当然、年賀状ワープロとしても使えるという事を意味する」
「そうなんですか」
「まだ構想の段階だがな」
「凄いですね。年賀状ソフトの分野のシェアも奪うつもりなんですね」
「そういう事になるかな」
「という事は、このカード型データベースソフトでもその住所録データが扱えるようにしなくてはならないんですね」
「当然、そうなる。トミーワープロの住所録管理機能とこのカード型データベースソフトの住所録管理機能は、見た目上も使い勝手も同じにしたい」
「そうします」
「二つのソフトで、同じファイルを読み込み書き込めるようにして欲しい」
「わかりました」
 二人が出て行って、間もなく私のリハビリは始まった。