2026-06-01から1ヶ月間の記事一覧
三十五 火曜日の午前八時半頃に、真理子は病室に入っていった。富岡は朝食を済ませていて、看護師がその御膳を片付けに来ているところだった。 ショルダーバッグに入れてきた手帳とインタビュー記事が載った雑誌を、真理子は「これでいい」と渡すと、富岡は…
三十四 月曜日午前九時だった。病院に寄らずにそのまま会社に直行した。 真理子は、昨日の件がどうなったのか、気になっていたのだった。富岡もそれを知りたいだろうと、思ったのだった。 社長室に田中を呼んだ。 昨日の件を訊くと「方針が決まったので、今…
三十三 日曜日だったが、真理子は午前九時過ぎに会社に行ってみた。会社は平日のように動いていた。TS-Wordが発売されたからだった。今は、会社にとっては土日もなかったのだ。 開発部に顔を出した。 寝袋から出てきたばかりの、真理子は名前の知らない人が…
三十二 会社に寄ってから病院に行くことにした真理子は、午前九時には、会社にいた。昨日、富岡から託されたデバッグをやっている人を富岡の病室に連れていくためだった。 社長室に入ると内線で開発部長の内山を呼んだ。 「今、TS-Wordのデバッグをやってい…
三十一 帰りがけにナースステーションを通ると、看護師に呼び止められて、「富岡さんは、明日から流動食になりますので、ご承知ください」と言われた。 「点滴はなくなるんですか」と訊くと、「いいえ、点滴はそのままです」と応えが返ってきた。 「わたしが…
三十 TS-Wordの販売は依然好調が続いていた。社内は活気に満ちていた。 木曜日になると、販売宣伝部の松嶋が社長室にやってきて、「このまま行くと、販売数が足りそうにないんですが……」と言ってきた。 「一万ロットを超えるっていうこと」と真理子が訊くと…