2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧
次回は、10月17日木曜日にアップの予定です。
二十六 お昼になった。 安全防犯対策課のメンバーは誰も帰ってこなかった。いつもは屋上のベンチで昼食をとるのだが、今日は誰もいないので、デスクで弁当を広げた。 鶏そぼろと炒り卵の二色弁当だった。きくは鶏そぼろでハートマークを作っていた。 昨日の…
二十五 午後五時になったので、安全防犯対策課を出て、家に帰った。 きくが出迎えてくれた。 「子どもたちは」と訊くと、「プリントをしています」ときくは答えた。 「そうか。相変わらず、教育ママをやっているんだな」と僕は言った。 「教育ママって何です…
二十四 安全防犯対策課に戻ると、緑川が防犯安全キャンペーンのキャラクター募集のチラシ原稿を持ってきた。 それを見て、僕は「ああ、これでいい」と言った。 「じゃあ、これをプリンタで印刷して配りますね」と緑川は言った。 「そうしてくれ」と言った。 …
次回は、10月15日火曜日にアップの予定です。
二十三 次の日の朝のテレビのトップニュースは、警察官射殺未遂事件だった。ニュースでは、帰宅途中で狙われたとなっていた。狙われた警察官の氏名は公表されなかった。 犯人の重森昭夫と、彼に狙撃を指示したと見られる島村勇二については、詳しく報じられ…
二十二 定時になったので、僕は剣道の道具と鞄を持って、安全防犯対策課を出て、西新宿署に向かった。 西新宿署の近くまで来ると、建物が取り壊されて更地になっている所が多くなってくる。そこを歩いている時だった。嫌な予感がした。そして、突然、ズボン…
二十一 定時に黒金署の安全防犯対策課に行った。 午前十一時に、悟堂の家に実況検分に行くことになった。 ききょうがどのように連れ去られたかは、すでに検分済みだった。 悟堂の家で、続きの実況検分は行われた。当日の様子が再現されていた。 僕は、門から…
二十 定時になったので、鞄を取って安全防犯対策課を出た。 家に向かっていつものように歩いていた。 すると、ズボンのポケットのひょうたんが震えた。 「どうした」と僕は言った。 「誰か主様をつけてきています。邪念を持っています」と言った。 「そうか…
十九 署長室に入っていくと、副署長も来ていた。 署長は「まぁまぁ、そこに座りたまえ」とソファを指さした。 「失礼します」と言ってソファに座った。 「昨日は、大変だったね。それに大活躍だったじゃないか」と署長はご機嫌だった。悟堂の家が黒金署の管…
十八 家に帰ると、学校に電話をして、無事に家に戻ってきたことを副校長に伝えた。 副校長は「大事に至らずに良かったですね」と言った。 「ええ、そうですね」と僕は応えた。 それで電話を切った。 きくに「ききょうは風呂に入れさせろ」と言った。 「あな…
次回は、10月10日木曜日にアップの予定です。
十七 ききょうが寄ってきた。 「そうだ。学校に電話をしなくちゃ」と僕は言った。 自分の携帯で学校に電話をした。 副校長が出た。 「北園小学校、副校長の前川です」と言った。 「鏡京介です。やっと主犯格を捕まえました。警察に言ってもいいですよ」と言…
十六 ききょうのところに行った。目隠しを外した。 「パパ」とききょうは言った。 「もう、心配しなくていいからね」と言った。 後ろ手に縛っていた鈴蘭テープをカッターナイフで切った。 ききょうは抱きついてきた。 「怖かった。でも、パパがきっと助けに…
十五 高島研三が起こした警察官発砲の事件では、島村勇二は殺人教唆が問われ、実刑二年の刑が言い渡されている。ということは、その捜査資料が西新宿署にあるということだった。島村勇二の逃亡先が、その捜査資料から分からないものかと思いついた。 思いつ…
次回は、10月8日火曜日にアップの予定です。
十四 家に帰ると、きくが「怖かったです」と言った。 「そうだよな。突然、あんな車がこの通りに入り込んできたら、誰でも怖くなるものさ」と僕は言った。 「でも変なんですよ。パトカーを呼んだら、あの車に乗っていた二人は、二人とも大怪我を負っていて、…
十三 高台宗男は椅子にどっしりと座っていた。 僕はデスクの前に進んで、警察手帳を見せた。 「警察の方が何の用ですか」と高台は言った。 「私の家にお宅の従業員がし尿をまき散らそうとしたので、注意しに来たんですよ」と言った。 ここで時を止めた。 ズ…
十二 駅に向かって歩きながら、あやめと話した。 「考えてみれば、あやめがやったことは刑事が尋問をしていて、犯人を落とすときと同じことだな。それを直接、意識の中でやるから、効果はてきめんだったんだ」と言った。 「そうですよ。わたしだけでなく、主…
十一 このままでは、高橋丈治の思うとおりの方向に取調は進んでいきそうだった。 時を止めた。 「あやめ。取調官の意識を送れ」と言った。 「わかりました」と言った。 取調官の意識が流れてきた。 取調官浅井は、高橋丈治がすんなりと轢き逃げを認めたこと…
十 次の日、黒金署の安全防犯対策課に行った。 デスクに座ると、品川署から電話がかかってきた。岸田信子からだった。 「鏡課長ですか」 「はい、私です」と僕は言った。 「おはようございます」と岸田が言った。 「おはようございます」と返した。 「車の鑑…
九 僕はデスクに手をついて、前のめりになって、青木に顔を近づけた。 「私が何者か、知りたいでしょう。どうして秘密にしていることが分かるのか、不思議でしょうがないでしょう。それはこうして話しているからですよ。あなたのことは隅から隅まで調べてき…
八 青木運送の受付で、警察手帳を見せて、「社長にお会いしたいんですが」と言った。 「ちょっとお待ちください」と言って、受付の女性は内線電話をかけた。 そして、電話をかけ終わると、「どうぞ。あの建物の三階です」と奥の建物を指さして言った。 僕は…
七 緑川に「捜査二課に行ってくる」と言って、安全防犯対策課を出た。 捜査二課は三階にあった。 二課のドアを開け、近くにいた女性に警察手帳を見せて、「安全防犯対策課の鏡京介ですが、安達祐介さんをお願いします」と言った。 女性警察官は「ちょっと、…
六 交通事故の現場は、凉城恵子の意識から分かっていたので、事故現場に向かった。 凉城恵子の家の近くだった。そこには縦の掲示板が立っていた。 『二〇**年**月**日午前七時十五分頃、ここで轢き逃げ事件が起きました。青い車を見た人は、****ま…
五 NPC田端食品株式会社の本社を出ると、新宿駅に向かった。 新宿駅から北大井駅に向かった。大石庫男が言っていた建築中のビルは、電車からも見えた。 電車を降りると、その建築中のビルに向かった。 建築現場の歩道で警備に当たっていた人に、警察手帳…
四 次の日、出署して安全防犯対策課に行った。 デスクに着くと、早速携帯を取り出した。 まず、石原知子に電話した。 「はい、石原です」と気怠そうな声が聞こえてきた。 「私、黒金署の安全防犯対策課の鏡京介と言います」と言った。 「警察の方?」 「はい…
三 家に帰って、すぐに風呂に入った。僕は長風呂だった。つい考え事をしてしまうからだった。京一郎とも一緒に入らなくなっていた。 今回のリストアップされていた人についても考えていた。 事件後、NPC田端食品株式会社は株式の上場が認められなくなって…