2021-04-29から1日間の記事一覧

小説「真理の微笑 真理子編」

二十二 真理子は、午後一時になると、須藤のところに電話した。 真理子の提示した二百万円という数字は、当然予想していたよりもかなり低かったのだろう。しばらく沈黙が続いた。その沈黙の中には、怒りもあっただろう。 やがて須藤が「条件があるが聞いても…

小説「真理の微笑 真理子編」

二十一 手術の翌日、午前九時に社長室に入ると、滝川がお茶を運んできて、「手術はどうでしたか」と訊いた。「上手くいったわ」と答えた。「それはよろしかったですね」「心配してくださっていたのね」「それは、もちろんです」 真理子が「ありがとう」と答…

小説「真理の微笑 真理子編」

二十 水曜日は午前七時には目覚めた。 今日が最初の難関だということはわかっていた。ただ、真理子の心の中は醒めていた。心配をするという気持ちは、欠片ほどもなかった。だが、その演技はしなくてはならなかった。七、八時間の演技は、結構疲れるだろう。…